一般財団法人 エネルギー総合工学研究所著
総評
評価:★★★★★
先日、COP26が開催され石炭火力発電の将来的な撤廃やメタン排出の削減などをイギリスやアメリカを中心としてとり進められています。
日本では2030年に2013年度比-43%、2050年にはネットゼロという目標を掲げています。各社、日本の方針に沿って目標を出しているかと思います。
例えば、住友化学は30%削減しますと言っています。

ネットゼロとは温室効果ガスを全体としてゼロにするという意味で二酸化炭素のみならず、メタンや一酸化に窒素も対象としています。それを吸収量と除去量を差し引いてゼロに(正味ゼロ)にすることです。本書では「カーボンニュートラルとは何か」から、「電力システム」「投資に関して」まで網羅的に書かれています。
強み
なんといっても2021年9月発行ということもあり、最新情報が書かれています。
また、エネルギー総合工学研究所の研究員の方々が執筆されているので理系の読み手には特に分かりやすい内容です。特に注目したいのは、「水素エネルギーへの気体と見通し」の章となります。この章では“普及初期には、新規の設備導入が不要な副生水素による水素製造が経済的には有利だが、中長期的には水素(ブルー/グリーン)の需要が増えるため新たな設備が必要”と書かれています。

現実をちゃんと見て書かれているという印象であり、化学メーカーや石油精製会社単独でCCSの設備を持つことは考えられず、日本全体で考えなければならない問題だと提起している気がします。
弱み
本書の目的が情報の共有ということで、私の中では弱みはない気がしています。
例えば、風車の最大効率(Betsの限界値=0.593)の算出などはありませんので、必要あれば他書でのフォローが必要になります。
まとめ
今一度、自社の目標を確認して、何ができるのかを本書を手に取って考えてみたいと思えます。
インターナル・カーボンプライシングを導入している会社に勤めている方もいらっしゃると思います(私の会社はまだです)。投資判断でカーボンプライシングを用いた場合、今までは投資できていたものが将来的にできなくなる未来が近く来ています。本書で事前に情報を入手してはいかがでしょうか。
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