【書評vol.1】『現代化学工学』|基礎的な化学工学知識を習得可能

書評

総評

評価:★★★★☆

化学工学を勉強している学部生にとってはバイブルになるのではないかと思います。

20年~30年前は化学機械の理論と計算(亀井先生)を使っていたと思いますが、私の世代前後(10年前くらい?)ではこれを利用していました。

大学院入試は、これを勉強していればどこの大学院入試(化工)でも突破できると思います。

強み

まず、この本の強みを書いていきます。

第一章で、マテリアルバランス(物質収支)とヒートバランスの重要性が説かれます。

三浦先生が書かれていますが、何度も読み返すとその重要性を認識することができます。(化工の技術検討はバランスが重要な局面が多いです。)

移動現象に関しても、ニュートン流体メインですが詳しく書かれているのではないかと思います。実務では配管の放熱計算などにも役立ちます。

最後に、この本のなんといっても最大の強みは、反応工学ではないでしょうか。

大部分は反応工学(橋本健治著)反応工学 | 橋本 健治 |本 | 通販 | Amazonからの引用ですが、引用している書の完成度が高いので一冊購入することでお得に学ぶことができます。

弱み

一冊でカバーするには、もちろんページ数が少ないので弱いところも出てきてしまいます。

そこで、どこが弱いのか、それをカバーするには何を学べばよいのか書いていきます。

  • 分離(蒸留):蒸留塔の設計はこの本を読んでもできません。メインは2成分の分離を書いていますので、多成分の蒸留に関してはどのような考えで取り進めれば良いのかわからなくなります。
  • 伝熱(熱交換器):熱交とは何かやLMTD(対数平均温度差)について学ぶことが出来ます。熱交設計の第一歩ですが、Fファクターなどは全く出てきません。少し物足りなさを感じます。

補助的資料

弱みを補うにはどの資料を読んだか書いていきます。皆さんの参考になれば嬉しいです。

どちらも分離工学会から購入することが可能です。この2つですべてカバーはできませんが、大方の考えを理解することが出来るのではないかと思います。

「多成分の蒸留」ではキーコンポーネントやギリランドの相関図の重要性がわかります。2成分の分離をメインに取り扱っている現代化学工学では意外とスルーしてしまう内容ではないでしょうか。

「化学プラントのプロセス設計」は個人的には素晴らし本で、化学工学を学ぶ学生必読書にしてほしいくらいに感じています。

蒸留塔の運転制御から多成分分離、充填物の特徴まで抑えています。また、何より素晴らしいのは経済性評価まで書いてくれているところです。

アメリカではまず、経済性評価から学ぶところですが日本ではそれがすっぽ抜けています。

とてつもなく値段が高い本ですが、この本さえあれば問題なしと言えるものです。熱移動の一般式から、プレート熱交の設計、直接噴霧熱交換器の設計まで様々なタイプの熱交設計に対応できます。

実務の設計ではTEMAに準拠したシミュレーション(Aspen EDRやHTRI)を用いて計算していますが、この本を理解しているとシミュレーション計算の中身が分かります。

現代化学でわかる熱交換器関係の情報が1とすれば、この本では100くらいわかってしまいます。

ただ、実務では上述したようにシミュレーションがメインです。バックチェック用の手計算の際に使用しています。

感想

現代化学工学は化学工学全般を知ろうとした場合に使用する本では最適かと思います。

ただ、この本ですべてが分かるわけでは無く、それぞれの単元に目を向けると奥が深いものです。

しっかり勉強して(極力)広く深く知っていくようにしたいですね。

他の書評もおこないたいと思いますので、皆さんのご参考になれば幸甚です。

それでは!!

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